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鍼灸治療の効果ってどうやって出るの?

鍼灸治療の効果ってどうやって出るの?

こんにちは。兵庫県西宮市の鍼灸院【鍼灸みやび堂】の西川です。

鍼灸治療がいろいろ効くらしいと聞いたけれど、「そもそもハリを刺すだけで痛みが取れるのはなぜ?」と不思議に思われたことはありませんか?
体の中でどんなことが起こっているのか、現代科学的に分かりやすくお伝えします!

鍼灸治療で体に良い変化が

「肩が、腰が、膝が痛い」「なんとなく体がしんどい」「頭痛がする」「眠れなくて…」体の不調が気になって病院や整体院に行って、薬・注射・電気治療・マッサージといろいろ受けてみたものの、その時かぎりでどうにもすっきりしない。もっと何かないかなあ。

そんなさまざまなお悩みの改善に鍼灸治療が力になります。

実は、鍼灸治療を受けると、

  •  痛みが軽くなる
  •  こり固まった感覚から解放される
  •  ふわっと体が軽くなる
  •  お腹の調子が良くなる
  •  よく眠れるようになる
  •  風邪をひきにくくなる

などなど体に良い変化が見られるようになります。

では、どうやって鍼が効くのでしょうか。

からだ本来の力をアップする効果があるんです。

鍼には、体が持っている本来の力(生体反応)をアップさせる作用があります。人間の体は「鍼が入ってきた!」と感じると、それを神経などで頭や体じゅうに伝えます。そして、はたらきが弱っている所には活力を与えて、はたらきすぎている所には落ち着かせて、と両方向に作用します。

ここでは、東洋医学特有の「気」や「経絡」という考え方は少し横に置いておきます。鍼灸治療においてとても大事な考え方なのですが、現代人にはなじみがなくてかえって戸惑ってしまいがちですから。

電気信号が神経を伝わる

まず、鍼が体に入って来た時、真っ先に起こるのは『神経による反応(反射)』です。

神経は、体の内外の変化や刺激を感知して、脳へ情報を伝えたり、体が良いサジ加減ではたらけるように信号を伝えたりする、情報伝達のためのネットワークです。電気信号で情報を伝えているので、とても早く反応が起こります。

鍼の刺激が神経を伝わって筋肉にはたらくと、こり固まった筋肉の繊維が緩んで動きが良くなります。血管にはたらくと広がって血の流れがよくなり、鍼をした場所がふわっと赤くなります。血流が良くなることで筋肉もさらに緩みやすくなります。内臓へ伝わると、腸のはたらきが良くなってごろごろとお腹が鳴ります。日々の目まぐるしい刺激を受けすぎている交感神経(ストレスに対抗して活動を活発にする自律神経)に伝わると、その緊張が解放されて体の力がふっと抜けます。副交感神経(リラックスさせる自律神経)に伝わると脳内ホルモンの分泌が調整されます。

鍼治療を受けてすぐに「楽になったなあ」と感じるのは、神経の反射によるものなのです。

脳にしたたる「幸せホルモン」

次に、10分20分と少し時間をかけてから起こるのが、『脳内ホルモンの分泌を調整する反応』です。

脳内ホルモンとは、心や体を正常に保つために脳の中で出てくる化学物質のことです。100種類以上ありますが、中には感情や意欲に大きな影響を与えるものもあります。「幸せホルモン」と呼ばれているものもあります。

代表的なものに、安心感や平常心にかかわる「セロトニン」、やる気や快感にかかわる「ドーパミン」、ストレスに対抗して体のはたらきを活発にさせる交感神経にかかわる「ノルアドレナリン」、リラックスや回復をうながす副交感神経にかかわる「アセチルコリン」、鎮痛効果や高揚感が得られて脳内麻薬とも呼ばれる「βエンドルフィン」などがあります。どこかで耳にしたことがおありかもしれませんね。

鍼の刺激が脳へ伝わることで、脳内ホルモンの過不足にはたらきかけて適度な分泌を助けます。足りないものは増えるように、出すぎているものは減らすように、調整をうながします。特に、現代のように刺激の多すぎる日々では脳や神経ががんばりすぎています。鍼の適度な刺激で、リラックスして心や体を落ち着かせましょう。

体を守る免疫システムを

そのあと数日かけてじっくりと起こる反応が『免疫を調整する反応』です。

神経の反射や脳内ホルモンのところで出てきた「交感神経」「副交感神経」という体のはたらきを自動的に調整している自律神経は、体を細菌やウイルスから守る「免疫」というシステムにも大きくかかわっています。

細菌などの異物から体を守るシステムには「交感神経」がかかわっています。交感神経がはたらくと、体に侵入した細菌を食べて退治してくれる顆粒球という白血球(好中球など)が活発に活動します。どんどん細菌と戦って頑張ってくれているので、その戦場が赤く腫れて熱を持ったり膿(うみ)が出る化膿性の炎症という状態になります。

通常であれば適度な炎症で侵入物を退治して終わります。ですが、交感神経がはたらきすぎていると体の中の悪さをしない良い細菌達まで攻撃してしまいます。その結果、起こらなくてもいい炎症が起きやすくなって体調を崩しやすくなってしまうのです。

「副交感神経」がかかわるシステムではリンパ球がはたらきます。リンパ球は侵入した異物(抗原)を倒す武器である抗体を作ったり、ウイルスに侵されてしまった細胞やがん細胞を退治してくれます。また、リンパ球達が適度にはたらくよう制御している司令塔的なリンパ球もあります。

副交感神経がはたらきすぎると、リンパ球が過敏に異物(抗原)を攻撃していまいアレルギー疾患を引き起こすことがあります。

現代は光・音・情報など刺激が多すぎる時代です。この多すぎる刺激を受けて、交感神経がはたらきすぎている人が多くいます。もともと交感神経と副交感神経はバランス良くはたらいているのですが、交感神経がはたらきすぎると副交感神経のはたらく割合が下がってしまいます。そうするとリンパ球の活動も下がってしまって、感染症にかかりやすい「免疫力が下がった」状態になりやすくなります。

鍼治療や十分な休息で交感神経のはたらきすぎを改善して、自律神経のバランスを整えましょう。それがいわゆる「免疫力アップ」につながります。

まとめ

鍼治療は、

  1. すぐに出る神経の反応…治療後の「楽になったなあ」という感覚
  2. 少し経ってからの脳内ホルモン分泌の反応…脳をリラックス
  3. 数日かけて反応する免疫システムの調整…全身の自律神経のバランス改善

という段階を踏んで体にはたらきかけていきます。

最初の神経の反応は、軽い刺激ですぐに出やすいです。しかし、出やすいぶん消えやすくもあるので短い時間しか効果がもちません。一方で、脳内ホルモンや免疫システムの調整は、しっかりと体に刺激を与えてあげることでゆっくりと反応が起こります。そのぶん効果もじっくり長続きします。

当院の鍼灸治療は、ズーンとした響きのある刺激を体に与えます。そのため神経の反応だけでなく、脳内ホルモンや免疫の反応がよく起こります。治療直後だけでなく数日かけてじっくりと長く効いていくのは、脳や全身の自律神経にもしっかりとはたらきかけているからなのです。

痛い・つらい場所の一時的な対処だけでなく、全身の体調も調整してすっきりとした毎日を送っていただきたいと思っております。

鍼灸みやび堂

この記事を書いた人

Wirter

甲子園球場近く、兵庫県西宮市の鍼灸院、鍼灸みやび堂。解剖学に基づき、東洋医学と現代医学を合わせた二天堂鍼灸院中野式の鍼灸治療を実践しています。深いところまで鍼を安全にしっかりと届かせることで、筋繊維の固さをより確実にほぐすことが可能になり、鍼灸施術によって自然治癒力向上も期待できます。また、背面の深層筋のコリは、神経を介して自律神経の不調の要因になることが多いので、鍼で背中のコリを緩めることで全身の改善が期待できます。